お知らせ
僕に出来る最高のものを!
   ~舞台役者の映画への挑戦~

この映画のキーパーソンでもあり、主人公ユウヤのおじいちゃんである、松次郎役の石垣さんにお話を伺うことができました。

お話を伺いながら、今回の映画への想い、そして役者としてのプライドををひしひしと感じ、心が震える想いでした。
それを私達だけの胸の内に留めておくのは、あまりにもったいなく、わざわざお話をしてくださった石垣さんの想いを、皆様にも感じていただきたいと強く思い原稿を書いています。

まず、石垣のぼるさんは、ブランクこそありますが、18歳の頃から演劇をはじめられた超ベテランのアマチュアの舞台役者さんです。

常にやり直しがきかない、1発勝負の舞台の世界で演じてきた石垣さんはこの映画に携わった経緯をこんなふうに語ってくれました。

「最初、僕は、監督にオーデションで1回落とされたんですよ」
まだ年齢が若く、イメージと違うといった理由だったようです。

喜多 松次郎

石垣さんは、松次郎役がやりたくてオーディションを受けたので、
他の役なら出なくてもいいかなと思っていたある日
松次郎役に決まったという連絡を、助監督の伊賀さんから受けたそうです。

「一度は落とされたはずなのに、役がもらえた。
これは、きっと伊賀さんや、衣装担当の岩田さんが、いろいろと尽力してくれたんだろう。そう感じたからこそ、粋に感じ、その期待に応えたい!」

その一心で、台本を何度も何度も読み込み、さらにおじいちゃんという役柄に合うようにと
あごひげを生やし、イメージを作りあげ、初めての台本読み合わせの現場に向かったそうです。

2度目に会った監督は松次郎さんにこんな言葉をかけたそうです。
「ありがとうございます、イメージ通りの雰囲気です」

この言葉を聞いた途端、自分のことのように目頭が熱くなりました。
多くを語らず、大げさに話す方でもないのですが、いつの間にか、
私は、石垣さんの話に、すっかり引き込まれていたのでした。
役者さんだなあーーと、改めて感じた瞬間でした。

それと同時に、石垣さんの役者としての情熱、心意気を感じました。
また、人として大切な「恩義」に熱い方だなあという印象を強く受けました。

実は、私たちもこの台本読み合わせの席に参加させていただいており、
その時、監督から石垣さんについて、こんな話を聞いていました。

「このねー、おじいちゃん役の人がね、ほんと役にぴったりなんだよ、ほんと凄い人なんだよ」

監督が何度も凄い人と繰り返す度に、石垣さんという役者さんは、
いったいどんな方なんだろうと、お会いできるのを楽しみにしていたのを覚えています。
もちろん、当時は石垣さんが一度オーディションに落とされたことなど
知るはずもなかったので、この裏話は本当に印象深いお話でした。

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「私生活もね、自重してね、実はいろいろあったんだ」
石垣さんは笑いながら、話してくれましたが、映画に取り組んだ1年の間にはいろいろご苦労もあったようです。

石垣さんは、映画を撮る前の風貌では、おじいちゃんには、まず見えません。でも、役作りの為に、あごひげを生やしていたので、周りの方は驚き、いい反応をする方ばかりではなかったそうです。

「どうしたの?って聞かれたり、親には泣かれるし、おじいちゃんみたいで嫌だって言われるし・・、仕事もちょっと、これじゃあーねえ・・・」
話ができる人には、役作りのためだと説明ができるけれど、話ができない人もいるからと
外出を控えたりもしていたそうです。

それでも、石垣さんは映画の為に、約1年近く、その風貌で過ごし続けました。

また、自分の出番がない撮影日でも、石垣さんは現場に足を運んでいたそうです。

「自分の出番だけ行ってってのはね。。。
みんなスタッフの人も役者さんも、本当にがんばってるから、僕も最後まで付き合わなきゃ」
仕事を自重していたのは、その為もあったそうです。

私たちも取材に、何度かお邪魔させていただきましたが
出番がないときも来られていて、いつも真剣に現場を見つめている石垣さんの横顔が
強く印象に残っています。

「あの子は、本当にすごい子だよ、何か持ってるとは思ってたけど、本当にすごい子だ」
また、石垣さんは、ユウヤのことを、こんなふうに大絶賛していました。
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ユウヤ役の熊岡君と石垣さんは、現場でも本当の孫とおじいちゃんのような雰囲気でしたが、
こんなエピソードを伺いました。

熊岡君は、幼稚園の頃からプロを目指し、ダンスを習っているそうなのですが、
神戸であるダンスの舞台があり、石垣さんも見に行く予定にしていたそうです。

熊岡君から届いた、チケットが入った封筒には手紙が入っており
「松じいのことは、本当のおじいちゃんのように思っていました」
という一文があり、これを読んだ石垣さんは、涙が止まらなかったと話してくれました。

また、ステージ本番、熊岡君は一曲のダンスを踊り終え、最後にポーズを決めた瞬間、壇上から他のお客さんに分からないように、石垣さんにだけ伝わるようにフッと視線を下げ、黙礼をしてきたそうです。
「わざわざ神戸まで、見に来てくれてありがとうございます」
言葉はありませんが、そう伝わり、石垣さんは周りの目も気にせず、大泣きしたそうです。
「舞台の上から、真っ暗な客席の僕を見つけ、こんなことをしてくれるなんて、只者じゃないよ」
石垣さんは、力説されていました。

そして、終演後ロビーで、熊岡君を待っていたときの事です。
「取り巻きに囲まれていたユウヤは、僕を見つけると、駆け寄って抱きついてきたんだ。
また、僕は涙が、ボロボロボロボロあふれて、それを見たユウヤも、泣き出して。
でも、僕、家に帰って気づいたんだけど、ユウヤと一言も言葉を交わしてなかったんだ」

約1年に及ぶ映画撮影の中で、お互いの心がこんなにも通じあったのは
石垣さんはもちろん、ユウヤ役の熊岡君も、この映画に、そして役作りに必死に取り組んでいたことを
物語る以外の何者でもないと感じました。

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お話を伺った日も、ご自身の出番はないものの、撮影の合間だったにも関わらず
貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
お話を伺い、こんな素敵な役者さんが取り組んだこの映画への期待がもっともっと高まり、
2月の上映が待ちきれない想いです。

同時に、この映画撮影に少しですが携われたことを、改めて光栄に感じます。

釜次監督、並びにスタッフの皆様、出演者の皆様、
いつも気持ちよく取材させていただき、ありがとうございました。

また、映画撮影の取材のお話を下さった、助監督の伊賀さん、劇団F・F代表の岩田さん、
貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

この場を借りまして、御礼申し上げます。

また機会があれば、他の役者さん、スタッフさんの話も聞ければと思っておりますので
その際には、また皆様にお知らせしますね。

まちぐるKAGAWA スタッフ